『詩の生まれる場所』 竹村正人 第6回 朝鮮
家族を養い、生き抜かんがために、職場や学校や家庭で私たちは「通称名」を使わざるを得ない悔しい毎日を送っている。しかしだからこそ逆説的に、私たちは朝鮮人であるという民族の尊厳と価値を是が非でも守りたいと願う。そのために闘う。これは、在日同胞への呼びかけであり、私自身への自省である。
―――鄭祐宗
日本語で「象徴」と訳されるシン‐ボルsym-boleは、もともとは二つに分けられたものという意味であり、その片割れを持ち寄った二人がそれを合わせることで互いを認め合うことができる、それは一種のパスワードのようなもので、同じ共同体に属している証拠でもあるという。
外被物の強度に比例して爆薬はその力を増大させる、とは金時鐘の言葉だが(「日本語のおびえ」)、これは真に受けて恐るべき科学だ。朝鮮が日本にあって詩の源泉となる理由もこの言葉に関わる。それは朝鮮が、シン‐ボルそのものとして存在し続けているからである。これは自明のことではない。底辺に生きる人間の断片を繋げる努力がなければ、そのようにして生きるのだという不断の下降がなければ、それは詩になりえない。「象徴」という語がまず独占されてあるこの国で、日本語のリズムに身を沈めながら爆薬は静かに力を増していく。
今日も挙げられた 朝鮮人
やみ煙草つくりの 朝鮮人。
昨日も押さえられた 朝鮮人
ドブロク造りの 朝鮮人。
今日も掘つてる 朝鮮人
鉄屑ほりの 朝鮮人。
今も潰かつている 朝鮮人
どぶ河あさりの 朝鮮人。
昨日も今日も 朝鮮人
紙屑ひらいの 朝鮮人。
押して通して 朝鮮人
車が いたんだ 朝鮮人。
祖国つぶす 戦争に
屑鉄ひらつて お手だすけ
心に泣きなき お手だすけ。
紙屑ひらつては さげすまれ
お米を運んでは きらわれる。
自由を叫んでも 御法度だし
平和が好きでも 送還られた。
国語を知らない 朝鮮の子
言葉をもつぱら 日本語で
アボジを呼ぶにも「お父さん」
祖国も知らぬ 歴史も知らぬ
日本天皇は よく知つてござる。(金時鐘「在日朝鮮人」より)
* 冒頭は『月刊イオ』2008年10月号より、文末は金時鐘『原野の詩』(立風書房、1991)より前半部を、それぞれ引用。
『月刊イオ』 http://www.io-web.net/
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